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2011年7月31日 (日)

『空想より科学へ』(エンゲルス)

マルクスの盟友エンゲルスは、1820年にドイツのバルメンで生まれた。
8人兄弟の長男で高校を中退して家業を手伝い、その後も職を遍歴し軍隊の経験もある。
そのプロセスで労働者の実情に接し、
共産主義の思想を確立すると共に、さまざまな論文を投稿するようになる。

父は会社の共同経営者だったから、決して貧しい生活ではなかったが、
ヘーゲルの弁証法に傾倒し、さらに推し進めた左派として活動するうちに、
マルクスと運命的な出会いを果たした。

マルクスが学究生活に没頭したのに対して、
エンゲルスは20年に渡りビジネスマンとして働き、
最後は支配人にまで昇格し、マルクスの経済生活を支え続けた。

69年には現場を退いたが、75年までは共同出資者として関わり、
ブルジョワジーとして生計を立てていたのも、どこか皮肉な思いがする。
その翌年から『反デューリング論』『空想から科学へ』
『家族、私有財産および国家の起源』『フォイエルバッハ論』などを次々と執筆した。

マルクスの死後は遺稿の整理に携わる一方で、第二インターナショナルをサポートし、
ロンドンで実施された第一回メーデーの参加を呼びかけるなど、
精力的に社会主義の普及に努めた。
しかし病魔に冒され、1895年に食道癌で逝去する。

『空想より科学へ』は、元々『反デューリング論』の中の3つの章を、
加筆修正してパンフレットとしてまとめたものである。
サンシモンからフーリエ、オーウェンへ至る社会主義思想の系譜を追い、
唯物史観に基づく弁証法哲学の正当性を明らかにする。文章は過激で攻撃的である。

「これまでのすべての歴史は、原始状態を別にすれば、階級闘争の歴史であった」

「社会のそのときどきの経済構造が現実の土台をなしているのであって、
それぞれの歴史的時期の法的および政治的諸制度や、
宗教的、哲学的、その他の見解から成り立っている上部構造の全体は、
究極においてこの土台から説明されるべきである」

「一切の社会変動と政治的変革の究極の原因は、人間の頭の中にでなく、
つまり永遠の真理や正義を認識していくことでなく、
生産と交換の様式の変化に求められねばならない」

「ブルジョアジーは個々人の生産手段を、
多数の人間全体によってのみ使用され得る生産手段に換えることなしには、
これらの制限された生産手段を強力な生産手段へ変えられなかった」

ヘラクレイトスの『万物流転』からダーウィンの『種の起源』まで、
エンゲルスは博識を援用して、ヘーゲル哲学の前提を踏まえながら、
新しい哲学の誕生を高らかに宣言する。

多少強引な印象は免れないが、一面の心理があると納得するのも、
エンゲルスの説得力の凄さである。
時代背景を考えれば、的確な想像力にも驚かされる。

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