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2011年6月14日 (火)

『孫子』(孫子)

『孫子』は紀元前5世紀の初め、
春秋時代の呉王に仕えた孫武の著作と伝えられていたが、
その後の研究で兵法の家系である孫子が代々伝え、
紀元前3世紀、戦国時代末期に成立したという説が有力になっている。

何れにしても中国最古の兵法書である。

『孫子』が今の時代にも影響力を及ぼしているのは、
戦争が経済行為の一端という本質を見抜いていたからである。

「敵国を傷つけず、そのまま降伏させるのが最上の策」と考え、
食料の調達や兵士の徴用に細かな配慮を示し、
戦争を経済活動のプロセスとして捉えている。

『孫子』によれば、戦いに勝つための要諦は、次の5つの条件に絞り込まれる。

1 時機を得ること
2 適材適所に人を用いること
3 人心を掌握して目的に集中すること
4 準備周到に整え敵の油断を衝くこと
5 将軍が有能で主君が干渉しないこと

「彼を知りて己れを知れば、百戦して危うからず」という言葉も、
こうした環境を熟成させてからでなければ実効性が薄い。

勝つように準備を進めて、勝つための手を誤らず、
勝った後の対処を鮮明に描いた組織が勝ち、
勝つことだけを求める組織は必ず負ける。

「戦闘というものは定石通りの正法で敵と会戦し、
状況の変化に適応した奇法で勝利する」という一句は、
勝ち残るセオリーと読める。

基本ができていなければ闘いの場に臨めず、
マニュアルだけに頼っていたらライバルに競り勝てない。

「道には通ってならないところがあり、敵軍には撃ってはならない陣があり、
城には攻めてはならない場所があり、君命には受けてはならない言葉がある」
という文章を理解できるか否か、
読む人がどれだけ修羅場を潜り抜けてきたかを問われている。

言われたままの仕事しかやっていなければ、
『孫子』の含蓄に富んだ一言一句は的確に伝わらない。

『孫子』は、私たちのリトマス試験紙である。
置かれた立場が変わるごとに、新しい問いを発し続けてくれる。
短い言葉の意味が重く深くなる。

実際に『孫子』はさまざまに読み解かれ、時代の節目になると脚光を浴びる。
世の中が混乱してくると、原点を求める動きが強くなるから、
皆が『孫子』という座標軸に戻ってくる。

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