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2011年5月27日 (金)

フィクションを裏読みする01

フィクションとは虚構のことであり、
一般的には小説や物語をさします。
事実に基づいて書かれた
ノンフィクションと対比されますが、
一方でT・カポーティの『冷血』や
W・スタイロンの『ナット・ターナーの告白』は、
ノンフィクション・ノベルと呼ばれます。

登場人物も舞台設定も架空であり、
ストーリー展開も自由なのですから、
さぞや荒唐無稽な作品が生まれると思いますが、
ひと握りの実験的な創作を除けば、
わかりやすい作品が多いように思われます。
ル・クレジオの『調書』などは異端と考えられます。

これは、私たちの想像力の問題です。
著者の描いた世界を私たちが理解できなければ、
それは表現として成り立たないわけですから、
イマジネーションの及ぶ範囲内で、
著者は物語の世界を築きあげるのです。
著者自身の想像力にも限界があります。

私たちは、
経験したことや学習したことの延長線上でしか、
イメージを描くことができません。
習得した知識をデフォルメしたり、
組み合わせながら、
新しい形をつくりあげていくのです。
まったく新しい発想と喜んでも、
分解してみれば既知の発想なのです。

そうしたことがわかっている著者は、
作品にリアリティを与えます。
実世界を写実するのではなく、
独自の秩序をフィクションの内部に築くのです。
実社会と無縁の世界を描こうとするのではなく、
位相のずれた世界を創出しようと試みます。

この距離を微調整すれば、
表現する意味の深さが読めます。
カミュが『異邦人』の舞台を、
なぜ乾いた土地にしたのか、
ムルソーが銃を撃ったときに照りつけていた太陽は、
今も私たちの頭上に輝いている太陽なのか、
イマジネーションで距離を埋めましょう。

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