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2006年7月 9日 (日)

堕落バッジって、おい

 今年は坂口安吾の生誕100年だそうで、東京の世田谷文学館で、坂口安吾をモデルにした文豪Tシャツを売り出すという。1着4,410円が高いのか、安いのか、わからないが、先着300名には堕落バッジのおまけつき。安吾の代表作『堕落論』をもじってるのは言うまでもない。

 織田作之助と並んで無頼派のシンボル、安吾は私の好きな作家のひとり。彼の描く女性像は儚く、それでいて図太い。男どもが意気地をなくしても、女たちはたくましく生き延びる。行き場のない人生で、安吾にとって女神たちは生きるための座標であり、拠り所だったに違いない。

 それにしても堕落バッジとは、恐れ入谷の鬼子母神。草葉の陰で安吾も苦笑い。誰が買うと思ってるのだろうか。買った人が『白痴』や『青鬼の褌を洗う女』を読むのか。文学に親しんでもらおうと、形振り構わない気持ちはわかるけれど、ちょっとばかし方向がずれているのでは?

 こうした話を小耳に挟むと、改めて出版とは何なのか、考えさせられてしまう。文学として価値が高いと諭しても、読者はそう簡単に増えないだろうし、それ以前に食指を動かす版元は現れない。目の前に現金の匂いを嗅がなければ、企画を立てない出版社が増えている。

 志では飯が食えないと、耳にタコができるほど聞いている。しかし志がなければ、出版はアドバンテージをとれるのか。安吾の生誕100年なら、安吾の本を前面に打ち出し、読まれるようにするのが筋なのに、小手先に走らなければならない現実が哀しすぎる。
 

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